『卵子提供ー美談の裏側』を見て

『卵子提供ー美談の裏側』という映画を見た。原題は『Eggsploitation』というもの。

 自分の卵子では子どもができない女性に、卵子提供をして、子どもを持ちたいというカップルの望みを叶えてあげる、そういう善意から、若い女性がホルモン剤を打たれ、数十個という卵子を提供している状況がある。

 

 しかしながら、実態は、提供しているというより、卵子のために女性が搾取されているのであり、また、それがきっかけで命を危険にさらしたり、様々な後遺症に苦悩する事態が起こっている。この映画では、生殖医療の先進国アメリカにおける卵子提供の実態が描かれている。

http://www.eggsploitation.com/

 

翻訳したのは、「代理出産を問い直す会」という団体で、代理出産を始め、生殖医療の諸問題について独自の見解を表明している。

団体のHPはこちら http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~yyanagi/

 

生殖医療については、治療で子どもを持てる可能性が高まるということが言われる一方、その負の側面については、ほとんど語られないという問題がある。

1,卵子提供にも共通するが、採卵手術のための、ホルモン剤の使用により、治療を受ける女性に様々な身体的リスクを生じていること。

2,そのほかにも、多胎妊娠が多く、妊娠後したとしても、さらに母体への負担が大きい。多胎妊娠のリスクにより、胎児自身への負担も起こりうる。(ハイリスク妊娠)

3,体外受精という人為的で不自然な生殖のあり方から、子どもに障害が発生するリスクがあるかもしれないということ。医学的には、その可能性が、高いとする場合と、それほど高いわけではない、とする両方の立場がある。

 が、たとえば、日本の場合では、「生まれた子ども」における障害の発生は、自然妊娠の場合と大きな差があるわけではないといわれる。が、他方、経過不明の妊娠も少なくなく、そこには、実は、障害があるために、中絶されたケースも入ってくる。体外受精による妊娠の経過を十分に観察したり、統計をとったりしているわけではない。ここには、都合が悪い部分については、あえて明らかにしないという側面があるのではないかということが疑われる。

4,胎児だけでなく、女性の身体にも影響がないわけではない。採卵のために、女性ホルモンを使用することで、将来的に女性が、乳がんや、婦人科系がんなど、様々な後遺症を生じる可能性があると言うこと。この点についても、ほとんど明確な研究結果があるわけではない。

 なぜ、このような重大な影響の有無を調査しないのか。そこから、不妊治療が、本当に当事者のことを考えて提供されている医療なのか、という疑念も湧いてくる。様々な薬剤を使用する場合、将来的に見て、それがいかなる結果をもたらすのかを調査研究することは、医学・薬学の責任であろう。

5,医療を受ける者については、現在、インフォームド・コンセントが重要だとされている。治療や医療を受ける前に、その方法について、利点と短所について、十分な説明がなされなければならない。